日 時 : | 2022年9月2日(金) ー 9月11日(日) 12:00−19:00 *月曜休廊 |
場 所 : | SOMSOC Gallery (東京都渋谷区神宮前3-22-11) |
U R L : | https://somsoc.jp/ |
イベント: | 「刺繍デスク」9月4日(日) / 9月11日(日) 12:00 – 19:00 *1ドリンクオーダー制 |
SOMSOC Galleryでは、2022年9月2日(金)より久村卓個展「一点彫刻」を開催します。
ハンドメイドやDIYといった美術の周縁に位置すると考えられる素材や技法を積極的に採用し、制作を行なってきた久村卓。衣服に付いているロゴマークに台座や空間を縫い足し彫刻に仕立てる「PLUS」シリーズや、既製品をベンチの装飾として取り込んだ「One-point Structure」シリーズなど、一見するとシャツや椅子に見えて「彫刻」とは気付かないような作品は、いずれも既製品の一部分を操作することで作品へと変化させることから、タイトルも「一点彫刻 (*ワンポイント・スカルプチャーズ)」となっています。
この「彫刻」と呼ぶにはあまりにも消極的な久村の取り組みは、ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートに見られる「作らない」態度とは違って「(彫刻らしきものが上手に)作れない」というコンプレックスが原因であり、それを乗り越えるために「台座に乗っているものが彫刻である」という美術の制度的な思考に関心が意識が移っていった結果、獲得した方法論です。過去にはギャラリーの壁や床、台座や備品を作品の素材に用いて展示空間に変化を与えるインスタレーションを行なっていましたが、怪我をして重いものがあまり持てなくなってからは、シャツのロゴマークを彫刻にするため台座を縫うというアイデアを得て、この風変わりな彫刻作品が作り続けられています。
またベンチも、展示という美術の制度を支える重要な要素です。例えば美術館に行って、どんなに良い作品が見られたとしても、足が疲れてしまってはゆっくり鑑賞するどころではありません。そんな時は「彫刻よりもベンチが必要」と言う久村は、ベンチとして機能する彫刻を度々作ってきました。本展に出品する「One-point Structure」シリーズは、訪れた人が腰を掛けて少し長居することを促し、無理なく美術に触れるきっかけをつくるだけではなく、週末に開催されるワークショップでは、一時的に生まれるコミュニティをゆるやかに繋ぐ役割を果たします。
久村は、シャツとして着ることができたり、ベンチとして座ることができたりと、応用芸術としての側面を捨てない自身の作品を「美術の価値に対する迷い」だと言います。災害や戦争、あるいは自身の身体や感情など、美術を取り巻く状況や心理の変化によってその価値が変わってしまう事に対する備えが、鑑賞と実用の両面を含んだ表現に結びついているのです。ぜひこの機会にご覧いただければ幸いです。